獣医師コラム
【マラセチア皮膚炎】
マラセチア皮膚炎は犬の年齢、性別、品種を問わず発症します。夏もしくは湿度の高い時期に症状を呈する動物が多く、これからの季節、マラセチア皮膚炎に罹患した患者様が増えていくことが予想されます。今回は世界獣医皮膚科学会(WAVD)のコンセンサスガイドラインについて概説しようと思います。
【一般徴候】
一般的に掻痒性皮膚炎(皮膚に痒みを伴う炎症)または耳炎として発症します。痒みの重症度は、軽度から非常に重度まで様々です。痒みの徴候として、耳を掻いたり、頭を振る、また、肉球をなめるなどがあります。
【皮膚病変】
犬のマラセチア皮膚炎における皮膚病変は、局所的なものと全身的なものがあります。皮膚および被毛はあぶら症になり、かゆみのために二次的な脱毛を生じることがあります。慢性例では色素沈着がみられることもあります。
耳におけるマラセチアの増殖したものの典型例としては、かゆみを呈し、耳介や外耳道に炎症を生じ、褐色の耳垢が大量にみられる。
特にかゆみが主な徴候と言えるでしょう。
【治療法】
犬のマラセチア皮膚炎に対するさまざまな治療法の中で、現時点で最も高いエビデンスがあるのが、2%ミコナゾールと2%クロルヘキシジンのシャンプーを週2回使用することであり、治療の第一選択となります。
マラセチア皮膚炎は一般的に若齢より生じる疾患であり、長期にわたって治療管理が必要になります。また、年齢とともに悪化することもあるため、徴候に合わせて治療の修正が必要になります。徴候が悪化すると、治療管理が大変なことも多い為、継承時から治療を開始し、また徴候が落ち着いた後もスキンケアなどによって綺麗な皮膚を維持するようにします。
痒みは動物にとって強いストレスになる場合もあります。気になる症状がある場合には、すぐに獣医師にご相談ください。
獣医師 千葉能子