獣医師コラム
動物のドライアイ
ドライアイとは「乾性角結膜炎」の一般的な名称で、涙液の欠乏によって起こる角膜や結膜の進行性炎症性疾患と定義されています。
眼の表面は涙液膜と言われる二層構造で構成され、外側から油層、液層に分けられ、液層はさらに水分層とムチン層に分類されるため、涙を目の表面に保持するには、油分やムチン成分が重要となります。
涙液の検査では、一般的に涙の量を測るシルマー試験(STT)と涙の安定性を調べる涙液層破壊時間試験(BUT)の2種類の検査が行われています。
ヒトの場合だとドライアイの診断基準として、BUTが5秒以下となることが含まれていますが、動物の場合だと臨床症状の有無やSTTで基準値以下の場合にドライアイと診断されてます。
イヌでは一般的な眼疾患で、原因としては先天性(涙腺の異常)や後天性(神経疾患、内分泌疾患、自己免疫疾患、医原性、感染、薬剤や放射線の影響)が挙げられます。
症状は粘液性眼脂、結膜充血、不快感が認められることが多く、重度なものになると角膜の色素沈着が認められます。
治療方法としては内科的な治療と外科的な治療がありますが、点眼薬を用いた内科治療が一般的で、外科治療は手術方法が煩雑で合併症も多いため広く普及はしていません。
使用する点眼薬は原因によって分かれますが、角膜保護薬や免疫抑制剤が使用されることが多く、神経の異常があれば副交感神経作動薬や感染の疑いがあれば抗菌薬の点眼薬を使用します。
角膜保護薬は水分層とムチン層を補充する目的で使用され、免疫抑制剤は涙液分泌刺激や抗炎症作用を目的に使用されます。点眼治療を行うことで8割近くの動物がSTTの改善がみられましたが、涙の量が極端に少ない動物は3割近くが点眼薬に対して反応がなかったとの報告もあります。
動物のドライアイ治療では点眼薬治療が欠かせないことが多く、点眼薬で一時的に涙の量が改善したとしても、点眼を辞めてしまうと再び涙液量が減ることがあります。そのため、症状が改善したとしても点眼を継続する必要性があります。
動物の目に対する違和感を少しでも無くすことができれば、気持ちのいい状態で日常生活を送ることができるかもしれません。
点眼の方法や回数に関しては、動物の性格や飼い主様の生活スタイルに合わせてプランを考える必要もあるので、お悩みの際はスタッフにお気軽にご相談ください。
獣医師 中島昂輝