獣医師コラム
椎間板ヘルニアとは、変性した椎間板組織が脊柱管内に脱出し脊髄を圧迫することで、神経の機能が低下している状態を
言います。
一般的に、軟骨異栄養犬種(ミニチュア・ダックスフンド,ウエルシュ・コーギー,ビーグル,シーズーなど)に多発します。ミニチュア・ダックスフンドは3〜7歳齢時に胸腰部に、ビーグルは若齢時から頚部に、シーズーは高齢時に発症しやすい傾向があるそうです。
診断
症状と神経学的検査によって重症度が分類されます。頚椎では3段階、胸腰椎では5段階に分類されます。
重症度が低い場合、すなわち痛みだけの場合は、保存治療が選択されますが、痛みが続く場合や麻痺が起きている場合は、外科治療が第一選択になります。
外科治療を行うためには確定診断が必要になります。確定診断は、当院では脊髄造影とCT検査を併用して行っています。
当院で行なった脊髄造影CT検査画像。左の画像が頚部椎間板ヘルニア、右の画像が腰部椎間板ヘルニアで、緑の矢印は
神経が圧迫されている部位です。
治療
保存治療: 4〜6週間の絶対安静と疼痛緩和。高容量のステロイド治療は、治療ガイドラインで『推奨されない』となっています。
外科治療: 頚椎では腹側減圧術を主に行っています。この術式は周囲の筋組織への侵襲が最小限で効果的に椎間板物質を除去できます。胸腰椎では小範囲片側椎弓切除術を主に行っています。この術式は椎体の関節を切除せずに 椎間板物質を除去できるので、侵襲が少なく、術後に脊椎が湾曲する合併症が起こりません。
予後
重症度が4段階までであれば、外科治療による改善率は80%以上と言われています。
一方で、保存治療による改善率の報告はほとんどなく、重症度が進行してしまうリスクがあります。
当院では16列マルチスライスCT装置と外科用X線撮影装置(Cアーム)を導入しておりますので、確定診断検査と手術を同時に行うことができます。
以前は、確定診断検査を別の画像診断施設で行い、後日手術を行っていましたが、現在は一回の全身麻酔で診断から手術までが迅速に行えるようになりました。
院長 大川雄一郎