獣医師コラム
TPLO法(脛骨高平部水平化骨切り術)
TPLO法とは
TPLO法は、犬猫の前十字靱帯断裂の治療法の一つです。1993年に、世界的に有名な獣医外科医のSlocumらにより考案され、今日までに、TPLO法を用いた術後経過に関する報告が世界中でなされており、現在のところ、最も成績の良い治療法とされています。TPLO法が普及する以前は、関節外制動法が多く用いられていました。関節外制動法が靭帯を補完する手術法であるのに対し、TPLO法は関節に安定性をもたらす手術法です。つまり、生体の靭帯や人工靱帯に頼らずに膝関節が安定化するという、非常に画期的な手術法が考案されたのです。TPLO法には特別な医療機器と技術が必要ですが、関節外制動法と比較して、術後早期の回復が得られること、術後の機能回復がより良好であること、術後の骨関節炎の進行がより軽度であること、術後の半月板損傷発生率が低いなどのメリットがあります。また、小型犬においても一般的に行われている関節外制動法に比較し、良好な改善が認められています。
・TPLO法における私の見解
私自身、TPLO法を始めるまでは、糸を用いて固定する関節外制動法(Flo法)を行っていました。しかし、術後に糸が緩んだり切れたりすることで、再手術になることもしばしばありました。そして、Flo法の変法であるスーチャーアンカー法やタイトループ法なども含めて、100症例以上の手術を行いましたが、術後の成績は改善しませんでした。そういう経緯もあり、8年程前からTPLO法を用いるようになりました。現在では、私のTPLO法における執刀症例数は、160症例以上になっております。この160症例のうち、再手術が必要であった症例は、わずか1症例であり、術後3ヶ月の時点で跛行が改善しなかった症例は、0症例でした。この成績は驚異的だと思います。獣医整形外科において、これほど効果的で、安定した成績をもたらすことのできる術式は、他にないと思っています。現在では、インプラントメーカー各社から、多様な形状のTPLO用プレートが開発されているため、膝蓋骨内方脱臼を併発した症例や、超小型犬や猫であっても、良好な成績を得ることができています。よって、現在T P L O法における私の実績は、相模原町田地域においては、最上位にあると自負しております。
院長 大川雄一郎
様々な形状のTPLOプレートを用いた当院での手術症例
院長 大川雄一郎