獣医師コラム
猫のがん
【猫にとってがんとは】
猫の室内飼育が主流になってきた現在、交通事故や感染症で命を落とす頭数は減った一方で猫の高齢化が進み、がんは人にとってだけではなく猫にとっても代表的な死因の一つとなりました。海外の獣医学研究では病死した猫のうち約1/3はがんで死亡したというデータがあります。(がん:32%、泌尿器疾患:23%、心臓病:9% 出典Animal Health Survey,Morris Animal Foundation,1998)
今回は猫のがんについて少し掘り下げてみましょう。
【そもそもがんってなに?】
がんとは悪性腫瘍のこと。細胞が異常に増え、塊になったものを腫瘍といい、腫瘍の中でも良性のものではなく悪性のものをがんと呼んでいます。良性の腫瘍は大きくなっても体に重大な悪さをすることはありませんが、悪性腫瘍は浸潤(異常細胞が無秩序かつ無制限に増殖を繰り返し周囲に染み込む)や転移(離れた組織にがんが飛び火する)の可能性があり、命を脅かすこともあります。
【犬に比べ猫の腫瘍は悪性が多い】
猫の腫瘍は悪性のことが多く、犬に比べ良性腫瘍のケースは少ない傾向にあります。また、現在良性と診断されても将来的に悪性に変わる可能性もあります(特に乳がん)。よって猫の腫瘍は良性でも悪性でも注意が必要です。
【高齢になる程がんのリスクは上がる】
現在猫の平均寿命は15歳と、ご長寿猫が増えてきています。高齢になるほどがんのリスクは一般的に上がり、また、かかりやすい猫や環境要因もリスクに関わってくることも。例えば白猫は紫外線の影響を受けやすいため扁平上皮がんになりやすく、受動喫煙した猫はリンパ腫のリスクが上がってくることが分かってきています。
【まとめ】
がんは様々な要因が絡み合って発生するので確実に予防することは難しい病気です。しかし1歳になる前の不妊手術で乳がんのリスクを減らすことができ、日々のスキンシップで早期で腫瘍を見つけることもあります。また、大幅に体重減少が見られた際も1度病院に相談することをお勧めします。
何か気になる点がある際にはすぐにご相談ください。
獣医師 千葉能子