獣医師コラム
【退職にあたって】
私は学生バイト時代を含めると、かれこれ8年の月日を「さがみ総合どうぶつ医療センター(旧オガタ動物病院)」と共にしてきました。
これまで治療させて頂いた動物達、ご家族のためを思って一緒になって考え、通って頂いた飼い主さまに、深く感謝申し上げます。また、臨床を少し齧っただけの無知な私をここまで育てて頂いた小方社長、大川院長、守屋分院長を始めとするスタッフの皆様に、この場を借りてお礼申し上げます。
退職という節目にあたり、通信のコラムを頼まれました。小動物臨床の仕事を続けてきて、獣医師としての在り方について感じた事がありましたので、書かせて頂きます。
私は学生時代に大学の先生から「いい獣医師になれよ」とよく言われていました。その頃の私は、「いい獣医師=病気を治せる獣医師」だと思っていました。獣医師として働き出してから、病気を治す事を目標にしていた私は、病気が治っても患者さんの体調が良くならないという壁に何度かぶつかった事があります。壁にぶつかって初めて病気を治すだけでは足りないと気付かされました。
医学教育の基礎を築いたウィリアム・オスラーの言葉の1つを紹介します。
「良き医師は病気を治療し、最良の医師は病気を持つ患者を治療する。」
病気を持つ動物を治療するためには、問診を通してその子のことをよく知り、考えなければなりません。目の前の病気にとらわれず、飼い主さまからお聞きした動物の情報を振り返り、その子にとって本当に治療すべき病気なのかを考える事がとても重要だと思っています。複数の病気を患っていたり、年齢や性格、家庭環境、飼い主さまの考え方により、治療の選択肢は変わってきます。そういったニーズに対して多方面から考え、最適な治療法を模索することにやりがいを感じると共に、この仕事の奥深さを知る事ができました。
私事ですが、2021年4月より鎌倉の病院で働くこととなりました。これからも動物を好きであり続けながら、最良の獣医師を目指して努力していきたいと思っています。
これまで関わって頂いた皆様、本当にありがとうございました。
獣医師 永井 直幸