猫のフィラリア症
犬を飼育している方には馴染み深い病気であるフィラリア症(犬糸状虫症)。実は猫にも感染することをご存知ですか?
フィラリア症は、蚊がフィラリア感染犬を吸血する時にフィラリア幼虫を吸い込み、その蚊に吸血されることによって、 犬や猫の体内に幼虫が侵入して感染を起こす寄生虫感染症です。
犬に感染した場合は、数ヶ月かけて成虫に成長し、心臓や肺の動脈に寄生することによって、心不全や呼吸不全を引き起こし、腎臓や肝臓などの全身に障害が及ぶことがあります。
フィラリア症に感染した犬の主な症状として、元気や食欲がなくなり、咳や血を吐いて呼吸が苦しくなる、お腹に水が溜まることでお腹が膨れる、尿が赤くなることなどがあります。そのまま治療を行わないと死に至る怖い感染症です。
次に猫に感染した場合です。猫の体内ではフィラリアが成長しづらいため、犬と比較して感染率は低くなります。しかし、感染した場合は犬よりも過剰に反応するため、重篤な症状を示すことがあります。
感染した猫では、咳や呼吸困難、嘔吐、嗜眠、食欲不振、体重減少などがあり、脳に寄生した場合には神経症状が見られることがあります。咳が最も多く見られる症状ですが、血管や肺の急性炎症反応が引き起こされることによる、犬糸状虫随伴呼吸器疾患(HARD)という猫に特有の反応によって引き起こされることがあります。また、死滅したフィラリアにより肺塞栓症が起きることが原因となり、
10〜20%の猫で突然死が生じると言われています。
フィラリア症と診断された猫の
4頭に1頭は室内飼育であったという報告や、東京都、千葉県での調査では、
10頭に1頭の猫がフィラリア幼虫に感染していたという報告もあります。また、
相模原市、町田市でも感染報告が上がっています。
当センターを受診されているワンちゃんの多くがフィラリア予防をされているため、陽性反応を示すワンちゃんは以前に比べて減少しています。しかし年に数例ほどフィラリア陽性を示すワンちゃんが受診されていますので、この街にも
フィラリア幼虫を持った蚊は飛んでいるのです。
感染期間は
蚊の発生1ヶ月後から終息の1ヶ月後まで(5月〜12月)です。
1ヶ月に1回の予防薬を投与することでフィラリア症を予防することができます。予防薬は背中にたらすだけのスポットタイプで簡単に投与でき、ノミやマダニ、お腹の寄生虫も同時に駆除することができます。
猫のフィラリア症は、犬より重篤な症状や突然死を招くことがありますが、他の病気と似ていたり、診断が難しいため見逃されがちな病気です。さらに治療も困難な病気でもあります。しかし
正しい知識を持ってきちんと予防すれば確実に防げる病気ですので、犬も猫も1ヶ月に1回、しっかり予防を行うことが大切です。