獣医師コラム
【犬の認知症(高齢性認知機能不全)について】
犬にも認知症があるのはご存知でしょうか。
犬の認知症はどの品種においても認められる疾患であるとされていますが、国内での調査では実に83%が日本犬との報告もあります。症状は緩やかに進行していき、発症時点からの予後は概ね半年から1年、長くて2年とされています。発症は一般的に9歳以上とされており年齢が増すにつれて罹患率が増加すると言われております。
臨床症状としては以下のものがよく観察され、その頭文字をとってDISHAまたはDISHAAと呼ばれます。
①見当識障害: 家で迷子になる様子や隙間に入り身動きが取れなくなる様子など
②社会的交流の変化:飼い主や他の犬への関心の低下など
③睡眠サイクルの変化:昼夜逆転など
④ 学習した行動の変化:排泄の失敗やおすわりなどの忘却
⑤徘徊や活動性の低下
⑥不安行動の増加
治療法としては現在のところ、根本治療はなく、治療の目的としては、病態の進行を可能な限り遅延させることや、患者や飼い主の生活の質を維持・向上させることになります。
治療には大きく3つに分かれます。
1.行動治療
自宅にて行なっていただく治療になります
。
①ストレスをかけない:犬を怒るようなことや不安になるような行動を避けるなど
②生活環境の改善:滑らない床や障害物の除去など
③心身ともに刺激を与えること:散歩(カートに乗せて行なっても良い)や、パズルフィーダーなど
2.食事療法
抗酸化物質であるビタミン群(ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC)、ユビキノン、認知機能改善が期待されるDHAやEPA、その他には、ルテイン、薬酸、ポリフェノール類、フォスファチジルセリン、フォスファチジルコリンやレーカルニチンといった栄養素が推奨されています。
3.薬物療法
夜間の不眠、不安、興奮などは、薬物療法で緩和できることがあります。まずは行動治療や食事療法を行い、それでも続くようであれば薬物療法になります。ただ、状態の悪化や離脱症状が出る薬物もあるため注意が必要になります。
少しでもDISHAのような兆候が見られましたら一度診察を推奨いたします。
畠山