獣医師コラム
ぶどう膜炎
目の構造は非常に複雑で、虹彩・毛様体・脈絡膜と言われる組織をまとめて「ぶどう膜」と呼びます。ぶどう膜は眼内組織への血液の供給、血液関門の形成、免疫の調節などの働きを担っていて、何かしらの原因があり炎症が起こってしまった状態のことを「ぶどう膜炎」と言います。
お家で気が付く症状としては、白目の充血(結膜・強膜充血)、目のしょぼつき(毛様体痙攣による痛み)、瞳が小さく感じる(縮瞳)、目が濁って見える(炎症物質による前房フレア)等だと思われます。
病院で行う検査としては眼圧の測定や眼科用の顕微鏡を用いた目の詳しい検査ですが、必要に応じてレントゲンや超音波の画像検査や血液検査等の全身の精密検査も行います。
病気の原因としては、感染性、外傷性、代謝性、腫瘍性、免疫介在性、特発性と非常に多岐に渡ります。ぶどう膜炎という病気は目の病気ですが、全身性疾患から目に生じている病気の症状のこともあるため、原因の特定に目の検査だけではなく全身の検査が必要となります。ただし、様々な検査を行ったとしても原因の特定が困難な場合も少なくありません。ぶどう膜炎の怖いところは、高眼圧を引き起こし合併症に続発性の緑内障があることです。
治療方法は原因によって異なりますが、どこかに異常が見つかった場合は原疾患に対する治療を行い、原因不明(免疫疾患や特発性疾患)の場合には炎症に対する抗炎症治療を行います。一般的に抗炎症薬としてはステロイドやNSAIDsを用いますが、点眼以外にも内服や注射で投与を行います。
ぶどう膜炎が進行してしまうと炎症によって眼圧が慢性的に低下し、眼球が萎縮してしまう眼球ろうとなってしまいます。そうなってしまうと視覚は無くなり、眼球が小さくなることによって瞼が内側に入り込んでしまうため、目脂の管理が大変になってしまいます。
眼の病気は全身の病気が影響し、症状として出ていることもあります。「目は口ほどに物を言う」ということわざは、物を言えない動物にとっては何かしらの病気のサインかもしれない?という意味になるかもしれません。
獣医師 中島昂輝