獣医師コラム
整形外科疾患といえば昔からヒトでも動物でも「触診」「X線検査」にて診断を下し、治療するという流れが主流となっていました。しかしここ数年で画像診断の進歩に伴い、整形外科においても診断ツールのバリエーションが大幅に増えた為、それぞれの画像検査の使い分けについてご紹介します。
1)X線検査
整形外科疾患に最も一般的に用いられる診断方法です。骨折、関節の脱臼、骨関節炎、腫瘍、関節の不整合、および先天性関節疾患といった骨の異常、関節の配置異常を検出する上で極めて有用です。また、鎮静・麻酔を必要とすることが少なく、侵襲性も低いと考えられます。
2)超音波検査
X線検査では評価することのできない、関節内の軟骨の構造、周辺筋肉や靭帯の病変に加え、関節液の貯留の有無の検出に活用することができます。また、前十字靭帯断裂や半月板損傷の診断に有用であり、損傷の程度を画像化して視認できることが最大の利点であると考えられます。鎮静・麻酔の必要性、侵襲性はX線検査と同等と考えられます。
3)CT検査
基本的な原理はX線と同じですが、X線検査とは異なり、3次元的に画像化することができます。骨腫瘍の髄腔内の広がり、3次元的な骨吸収の有無、詳細な骨変形を確認する際に用いられます。しかしX線検査や超音波検査とは異なり、実施するにあたって鎮静・麻酔が必要になりますが、侵襲性は低いと考えられます。
4)MRI検査
高磁場MRIであれば、末梢神経や関節の描出に活用できます。その為、神経疾患との鑑別に用いられます。
実施するにあたってCT検査同様、鎮静・麻酔は必要になりますが、侵襲性は低いと考えられます。
獣医師 中田 智裕